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  • 2018.07
第六話1-1 『跳ぶ』

其の波は、東北の都にも及んでいた。

 

主要な道路に停められている幾多の車は軒並み破壊され、炎と煙が上がっているのも少なくない。

 

加えて其処らに散乱する人間の残骸と、口元を血で汚して其れを貪るイナゴ擬きと怪物という『化け物』の群れが闊歩する様は、『地獄変』の言葉が相応しかろう。

 

『子孫が千代まで栄える様に』と名付けられた此の都も、今は見るも無惨な状況であった。

 

今現在、空には蒼い月が煌々と昇っている。ビルの屋上で注がれる月光を一身に浴び、魔女はヌイグルミを膝に乗せ、血染めの迷彩柄のヘルメットを手に取って眺めていた。

 

化け物の群れが飛来する前から、通達を受けていた此の地の自衛隊が迎撃の構えを取っていた。そして怪物が都の土を踏むと、直ちに火蓋が切られる。

 

自衛隊員達は良く訓練されていて勇敢で、実に統率が取れていた。

 

だが彼らの持つ小銃から放たれた銃弾は、怪物の外骨格の上を跳ねるだけで、逆に怪物の神経を逆撫でてしまう。

 

化け物の群れは自衛隊員達に突撃し、ある者は怪物に殴られて胴体を真っ二つに千切られ、ある者は其れの火炎に焼かれて消し炭となり、背後からイナゴ擬きに襲われて骸と化したりもしていた。

 

そんな状況に於いても、六人の自衛隊員が一匹の怪物の複眼に銃弾をフルオートで集中させ、軈て其の奥に在る脳神経球を破壊した。

 

怪物が地に伏した瞬間、自衛隊員達は雄叫びを挙げる。

 

『複眼を狙う』という対処は瞬く間に広がり、複眼以外に腹部を撃つ者も自然発生した。

 

最終的には乗ってきた装輪装甲車の上部に付いている、自動式の擲弾銃で面攻撃を行って機先を制し、其処に銃弾を浴びせるという手段が主流とする。

 

確かに擲弾銃の威力は目覚ましく、イナゴ擬きは当り所が良ければ一発、そうでなくとも二発で殺せる。怪物に対しても、肘や膝の関節に当たれば動きを鈍らせられた。

 

其れでも化け物の物量と勢いは如何ともしがたく、結果として押された自衛隊員達は生存者を率いて後退。防衛線を築き、次に備えて現在に至る。

 

魔女がヘルメットを、下から優しく放り投げた。

 

ヘルメットはスローリーに放物線を描く。頂点に達した所で魔女の指鉄砲から放たれた、たった一発のショッキング・ピンクの微小な光弾が、ヘルメットを忽ち(たちまち)に粉砕してしまった。

 

ビルの真下に居た化け物の群れは、空でショッキング・ピンクの閃光が炸裂したために其れまでの行動を止め、空に眼を向ける。

 

魔女は眼に灯りを灯しつつヌイグルミを抱え、眼下の群れを目掛けて微笑みながら飛び降りた。

 

其の時の魔女の頭の中は、王宮駅に残した赤城の事が浮かんでいた。
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【2017/05/23 20:40 】 | 戦神稲荷 | 有り難いご意見(0)
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