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  • 2018.05
第六話 1-2

無数の流れは地下に這わされ、人々からは遠ざけられて隠れされている。

 

大抵の人間は此処に踏みいる事が出来ない。其れが今は吉と出ていた。

 

「う゛……」

 

赤城が気絶から覚める。

 

開ける眼に直ぐ様、光が飛び込む。反射的に手を翳し、光量を減らして眼を守った。ついでに体勢が仰向けで有る事を知覚した。

 

「つぁ~……!」

 

上体を起こすと体が痛い。

 

スポットライトの様に真上から差す光で足元を見るに、コンクリート的な材質の地面の上に居り(おり)、こんな所にマットも引かずに寝ていれば痛くなるのは当然である。

 

光の周りは一片の隙も無い闇に囲まれている。駅のホームの端から似た様な物を見たばかりだ。

 

「大丈夫かい?」

 

不意に背後から掛けられた声に反射して赤城は体を四分の三程度に捻り(ひねり)ながら、前方へと瞬時にダイブする。

 

恐る恐る首だけを動かして、足越しに先程までの背後を見ると、白い塊が自らの揃った両足の幅からはみ出て見えていた。

 

「し、失礼した。そんな反応を示すとは思わなかったんだ……」

 

聞き覚えのある声だ。

 

もう一度体を起こし、胡座をかいた其処にはザクの足元に居た、あの落ち着いた感じの個体である。

 

個体が赤城の眼を見、『あっ』という表情をするので赤城は小さくビクついた。しかし個体はやおら静かに深呼吸を数回繰り返し、自らを落ち着かせる。

 

「……改めて名乗ろう、僕は“てづま”。君は?」

 

「あっ……赤城、司です……」

 

「“あかぎつかさ”? ……か。宜しく頼むよ」

 

イントネーションからして、姓と名を連ねられて解釈された様だ。

 

直ぐに訂正したい気持ちが起きるが、今は其処じゃないと、流石の赤城もグッと堪える。

 

「此処は……何処、ですか……?」

 

「恐らくは……下水道ではないかな?」

 

“てづま”の言葉に光が駆動音と共に動く。見ると、あのメカニカルな蜻蛉が頭を下にして壁に張り付いていたのだ。複眼部から光を放って、立派に照明の務めを果たしている。

 

壁から離れ、ホバリングする蜻蛉が照らし出した下水道の内径は七メートルといったところ。赤城と“てづま”が居るのは、壁に取り付けた様に端に設けられた通路だ。幅は人が一人通れるかどうかしかなく、よくぞ今まで落ちなかったものである。

 

通路の直ぐ脇には、直径が三〇センチのパイプが走っている。そしてパイプの隣がニ、三段低くなっていて、其れが此の下水道の中心だ。中心は泥水みたいな液体が流れているが、浮遊物やら何やらの気配は無い。

 

『下水道』と意識しても、臭いは別段しなかった。昔に父親と行ったゴミ処理センターの中の方が、此処の千倍は臭ったのを覚えている。

 

「都合良く、此処へと通じる蓋が開きかけていたんだ。開ける術を持っていた者が、直前まで居たのだろうね」

 

“てづま”の言葉に、赤城はまず『ふ~ん……』とだけ思った。当たり前に人語を話している事に関しては、何となく受け入れている自分が居る。

 

次に『どうして下水道に居るのだろう?』と考えた。

 

思い出せたのは、極直近の過去までであった。

 

殴り飛ばされて宙を舞い、後ろから前へ流れてく景色。揺さ振られる脳、弾ける真紅の火花、倒れた体に染み渡る痛み。

 

そして見下ろす蝗王の眼からは、呆れの感情が見えた気がした。

 

「あ゛っ!?」

 

緊張で生唾を飲んだ直後に喋ると出る掠れ。赤城の叫びに、さしもの“てづま”も毛が逆立った。

 

「むっ……虫ぃ! 虫虫虫っ! 虫はっ!? あれっ!? 一杯っ、うじゃうじゃっ……あっ、あの人! ザクザクっ!」

 

混乱し、『グォっ!』と“てづま”に赤城は顔を向ける。

 

「い……今、君の言った事を理解するのに努めているところだ……」

 

今に到って赤城は、其れはパニクっていた。

 

人を喰う化け物が闊歩している。其の現実を思い出してしまっては、赤城でなくとも誰しもが恐れおののいて然るべきだ。

 

加えて今の赤城はイクスではない。エンカウントしたら最後、一分と持たずに骸と化すだろう。

 

「ぉぉぉぉぉ……!」

 

赤城は唸るしか無かった。

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【2017/05/27 21:03 】 | 戦神稲荷 | 有り難いご意見(0)
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